山中温泉医療センター 臨床倫理に関する方針
・山中温泉医療センターの『ぬくもり憲章』に則って、患者(患者の意思を確認できない場合は家族)の意思を最大限尊重する。
・医療を行う際には、十分な説明を行い、患者が十分に理解し、同意・納得した上で医療行為を行う。(インフォームドコンセント)
・患者・家族に十分な医療情報を提供し、患者・家族の希望に十分耳を傾け、医療者側と患者側が共同で治療方針を決定する。
・医療行為の中止に関しては、患者の自己決定権を尊重する。患者は望まない治療を拒否できる権利を保証されるものとする。
・医療行為は、その妥当性について、主治医1人で決めることなく、関連する多職種で話し合い、患者・家族に十分説明し、
 同意・納得を得た上で行う。ただし、チームでの話し合いで解決が困難な場合、倫理委員会で審議する。
患者が自己決定できるように、医師は診断や治療法、予後の見通しについての正確な情報を提供する。
誤解や誤った情報に基づいて、意思決定をさせない。
基本的には、いかなる場合も身体抑制は行わない。しかし、患者の生命維持及び身体回復に必要な治療の遂行と患者安全のために
必要となる場合がある。抑制が必要と判断した場合、患者及び家族に対して、説明し同意を得て実施する。(身体抑制に関する基準を参照)
患者に十分な説明と話し合いを行った上で、患者の意向に基づいて検査や治療法を選択することを原則とする。
ただし、患者の判断能力に問題がある場合は、事前の意思表示や代理決定を尊重する。
未成年の場合や患者本人が身体的・精神的事情により、署名若しくは同意が困難な場合は法的代理人(後見人・親権者・保護義務者)、
家族代表者に十分説明をして同意及び理解を得る。重要な説明には、患者の信頼する家族や親族の同席を依頼する。
診療行為、特に侵襲を伴う行為を実施する場合は、病状の説明に加えて当該診療が必要な理由・診療の具体的内容・予想される合併症・
実施しない場合に予測される結果・他の手段とその利害得失・実施後の一般的経過などを説明し、同意を得る。
説明内容などの記録を残すと共に、セカンドオピニオンを保障する。
・有益な治療を拒否する患者への対応
 医師は治療によって生じる負担と利益を明確に提示する。手術・検査の危険性や治療の副作用が長期生存の可能性や
 症状の改善に見合うかを決定するのは患者本人であり、望まない治療を拒否できる権利は患者に保障されている。
・治療拒否を尊重
 患者の自己決定権を尊重する。治療の強要は認められない。(但し、輸血療法の拒否については ●宗教に関する問題 を参照)
・治療拒否の制限
 感染症法に基づき第一類、第二類、新感染症においては、治療拒否は制限される。
信仰上の理由などで輸血療法を拒否する患者であることが判明した場合は、患者本人および家族に対し検査法・治療法を含む診療内容、
特に輸血療法の必要性及び副作用を十分に説明し、理解を求める。しかし同意が得られない場合には、転院を勧告する場合もある。
妊娠中絶は、できれば行わない方が良いが、本人の意思に反して妊娠したような場合(強姦など)や、出産することで、
本人に悪影響がある場合(精神疾患、心臓病、弱者など)は、法律に則って施行することも必要なことである。
その際、以下を確認する。
・配偶者や親の意思よりも本人の意思が尊重される。
・妊娠22週未満に行う。
・未成年者は、保護者の承諾を必要とする。
・書面で意思を確認する。
・やむをえないと思われる理由がある。
・組織は廃棄処分とする。
病態のアセスメントに基づき、終末期と判断した患者に関して、患者本人と家族と医療チームの充分な話し合いにより、方針を決定する。
可能な限りの除痛や不快症状の緩和に努め、身体的援助のみならず精神的・社会的・霊的援助を含めた総合的なキュア及び
ケアを実施する。安楽死や自殺幇助の行為は実施しない。
CPR (Cardiopulmonary Resuscitation、心肺蘇生術) は、心停止に陥ったすべての患者に行われる救急処置である。
しかし、末期癌や重症の患者の場合、CPR は臨終を先延ばしにしているだけのことが多い。
また、見せかけだけのCPRは家族に対する欺瞞にもなり、何よりも患者が他人のために利用されてはならない。
CPR の有効性、DNR 指示の適切性を患者や家族と話し合い、倫理的側面を考慮し、症例ごとに適切性を検討しなければならない。
・CPRの有効性
 多くの臨床の場でCPRの効果は限られていることを、患者または代理人に理解してもらう。CPRが一般病棟で試みられたとき、
 回復し自宅復帰できる患者は14%である。転移がん、敗血症、血清クレアチニン高値の患者が無事に退院することは非常にまれである。
 CPR中に肋骨や胸骨の骨折は30%にみられる。重度の脳障害が発生することもある。
 DNRはすべての治療を行わないことを意味するものではなく、心停止後のCPRだけを実施しない指示といえる。
 従って、DNR指示があったとしても、抗生物質治療、輸血療法等は必要に応じて提供される。

・DNR指示の適切性
 @患者の意思を尊重する。
   医療従事者は、自分自身の経験と根拠に裏付けられた基準を持ち、病状説明のなかで、患者や患者家族とDNR指示について
   話し合いをする。医療従事者の思いや信念をも情報の一部として参考にして、患者が自己決定するべきである。
   事前指定書がある場合は意志を尊重する。
 ADNR指示を最終的に決めるのは誰か。
   患者の意思を確認し、CPRが医学的適応を持たないとき、DNR指示を下す最終的な決定者は医師である。
   ただし、担当者一人で決定するのではなく、指導医や他の複数の医療従事者と協議して決定する。
 B患者の意思が確認できない場合。
   不可逆的昏睡状態患者の場合や患者が家族と相談して決めてくださいという場合には、患者家族と医療従事者の話し合いで決めるが、
   医師は患者本人の利益や希望を最優先し、倫理面に充分配慮する。

・DNR指示の実際
 @DNR指示の記載。
   連絡ミスを防ぐため、関係する医療スタッフ全体で検討し、電子カルテの患者掲示板の患者治療方針に必ず記載する。
   特に当直者などへの連絡ミスのないように患者の状態が急変する可能性が高くなったときには勤務交代の申し送りで毎回確認する。
 ADNR指示の見直し。
   少なくとも2週ごとに、或いは患者の状態が変わった際には、指示を見直し再度妥当性を検討する。
末期患者における延命治療は、患者本人の意思を尊重することが最も重要であるが、治療行為の差し控えや中止を求める患者の
意思表示が存在した場合は、患者本人の口頭による意思表示以外に、患者本人が正確に判断できない状態では、
事前文書による意思表示を確認する。(リビングウィル)(アドバンス・ディレクディブ)
・アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive)
 まだ元気なうちに、自分の病態が終末期になったときのことを考えて、もしそうなったときには無駄と思われる医療とか、
 自分にはしてほしくない医療について、事前に医師に指示しておく書面のこと。 代表的なものに、「リビングウィル」「DNR]がある。
・リビングウィル(Living Will)
 自らの意志で延命治療を行わないことを書面にすること。これは生きている間に書面にする。事前指定書。
患者本人と家族の意思を尊重し、意思確認を保険証などで実施する。しかし、当センターは、脳死判定は行えない。
また、臓器提供の目的のための転院も行わない。心肺停止後の臓器提供については、『臓器提供に関するフローチャート』に沿って
移植コーディネーターや指定医療機関に連絡をとり対処する。